厚生労働省の対応

労働時間制度の在り方については、現在厚生労働省の労働政策審議会で審議されています。
これは2005年4月から検討されてきた学識経験者による「今後の労働時間制度に関する研究会」の報告を受けて、厚生労働省が労働政策審議会に対し、2006年2月8日付で検討を諮問したものです。
その経緯は厚生労働省のホームページに掲載されていますので、参考までに文末にHPのURLを記しておきます。

近年の労働関係は、これまでの法制度や過去の判例では対応できない新たな紛争をもたらすような変化が見られます。これは会社との契約関係、就業の形、労使双方の勤務に対する考え方や意識の変化をもたらしている社会、産業構造の枠組み自体が変化しているためともいえます。勤務の内容の多様化は、労働時間の長さが労働の成果に比例して考えられた法制度では対応しきれない部分が増えてきている状況です。労働者自らが自律的に働ける環境を設定した方が、より成果の上がる専門的なあるいは創造的な就業形態は、勤務時間の長短による業務成果判定ではふさわしくなくなっています。

厚生労働省は、労働時間制度に対する新たな対応を余儀なくされおり、「今後の労働時間制度に関する研究会」を開催したのがスタートですが、その1年前には「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」が開催されており、こちらも報告を受けた検討の諮問が2005年9月に行われています。
労働契約全般にわたる労使間の約束が現行法規が予定していないものであったり、これまでの判例に見られる事例とは様相を異にする争議が増加していることに対応しようとするものです。
労働時間制度の在り方と労働契約法制の在り方は相互に関連するものなので、名ばかり管理職をテーマにした本サイトでは報告書をはじめ、労働時間に関する考え方や法制度の在り方にスペースが割かれることになりますが、労働契約法制についても重要な背景として紹介されることになります。こちらの報告書も必要があれば別途項目を設けなければならないかもしれません。
現在労働政策審議会で審議されている「労働時間制度の在り方」は、先の研究会による報告を受けて検討諮問されたものなので、その報告の詳細を次項で紹介します。

参照:厚生労働省のホームページ上の公開記述は次の通りです。
「経済社会の構造変化により、労働者の就業意識の変化、働き方の多様化が進展し、成果等が必ずしも労働時間の長短に比例しない性格の業務を行う労働者が増加する中で労働者が創造的・専門的能力を発揮できる自律的な働き方への更なる対応が求められるなど、労働時間制度全般に係る検討を行うことが必要となっている。
 このような状況を踏まえ、平成16年の労働政策審議会の建議「今後の労働時間対策について」において、労働時間に関する施策の在り方について、引き続き検討していく必要性があるとされており、また、「規制改革・民間開放推進3か年計画」においても、労働時間規制の適用除外の拡大等について指摘されている。
 今般、厚生労働省では、以上のような状況にかんがみ、今後の労働時間法制の在り方について、本日付けで、労働政策審議会(会長 菅野和夫 明治大学法科大学院教授)に諮問した。

今後の労働時間制度に関する研究会報告書(ポイント)

現状認識と今後の展望

ホワイトカラー労働者の増加と働き方の多様化が進み、その中でも、自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなくその成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者が増加
  ↓
(1)所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進を図ることが必要
(2)労働者個人の事情に即した働き方の選択ができるよう、現行制度の見直しとともに、新たな労働時間の管理の在り方を検討
(3)その際、心身の健康への影響を未然に防ぐための措置が必要

見直しの方向性

すべての労働者が、個人の選択によって、生活時間を確保しつつ、仕事と生活を調和させて働くことを実現するという観点からの検討を行うとともに、その中でも「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく、成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者」について現行の労働時間制度では十分に対応できていない部分を検証した上で、労働時間制度全般について、運用や制度そのものの見直しを行うことが必要

新たな労働時間制度

・生活時間を確保しつつ仕事と生活を調和させて働くことを実現するための見直し
年次有給休暇
 労働者の希望を踏まえ、使用者が労働者の時季指定を補充することや、時間単位の取得などの取得促進策 等
時間外・休日労働
 一定時間を超える時間外労働の割増率の見直し 等
フレックスタイム制、事業場外みなし制
 フレックスタイム制は特定の曜日を除外することを、事業場外みなしはみなし労働時間の計算方法を見直し

・自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者のための制度
新しい自律的な労働時間制度
 労働時間規制に関わらず、より自由に、弾力的に働くことができ、更なる能力発揮が可能
「対象者の具体的なイメージ】
(1) 中堅の幹部候補者で管理監督者の手前に位置する者
(2) 研究開発部門のプロジェクトチームのリーダー

現行の裁量労働制、管理監督者
 裁量労働制は制度及び運用の改善を、管理監督者は要件の明確化や適正化を図る  等

厚生労働省発表 平成18年2月8日


参照:
厚生労働省ホームページ:
http://www.mhlw.go.jp
厚生労働省関係新議会議事録等のアドレス 労働政策審議会:
http://www.mhlw.go.jp/shingi/rousei.html#top
労働政策審議会に対する今後の労働時間法制の在り方についての諮問について:
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/02/s0208-5.html

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