「今後の労働時間制度に関する研究会」の報告書・1

厚生労働省により集められた学識経験者による「今後の労働時間制度に関する研究会」は、2005年4月から開催、検討された上報告書にまとめられました。この報告に基づいて、2006年2月8日付で労働政策審議会に検討諮問され審議に入っています。そこでまず、この報告書の内容を見ておきたいと思います。そのあとで、この報告書に対するは労使双方の見解を紹介し、最後に学者の立場を見ることにします。

「今後の労働時間制度に関する研究会」の報告
報告は3項目に分かれ、初めに「T:現状認識と今後の展望」があり、次に「U:見直しの方向性」、最後に「V:新たな労働時間制度」という構成になっています。
ここでは項目別に概略を紹介しますが、「見直しの方向性」と「新たな労働時間制度」についての詳細は項を改めて順に紹介します。特に「新たな労働時間制度」の中で最後に報告されている現行制度との関係、現行の裁量労働制との関係と管理監督者との関係は本サイトにかかわる内容となっています。

T 現状認識と今後の展望
現在の状況として、サービス産業の増加に伴うホワイトカラー労働者の比率が増加していることと、企業間における競争が激しくなっていることによる仕事の内容の変化や多様化をあげています。ホワイトカラー労働者の勤務実態においては、特に30代男性を中心に週60時間以上の勤務者が増え、有給休暇の所得率や取得日数の低下が見られること。企業間の競争の点からは、製品開発のスピードが求められ技術革新が加速しているために、仕事の成果が労働時間の長短によって評価できない、創造的で高付加価値的な内容の仕事に比重が移り始めていること。このため企業の対応として、組織のありかたが見直され、労働者に対しては目標管理制度の導入が見られ、賃金制度にも年俸制や成果主義賃金の検討、導入が見られる。
今後の展望として、
(1)所定外労働の削減や年次有給休暇の取得促進を図ることが必要
(2)労働者個人の事情に即した働き方の選択ができるよう、現行制度の見直しとともに、新たな労働時間の管理の在り方を検討
(3)その際、心身の健康への影響を未然に防ぐための措置
が必要としています。

U 見直しの方向性
見直しの方向性では、
すべての労働者が、個人の選択によって、生活時間を確保しつつ、仕事と生活を調和させて働くことを実現するという観点からの検討を行うとともに、その中でも「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく、成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者」について現行の労働時間制度では十分に対応できていない部分を検証した上で、労働時間制度全般について、運用や制度そのものの見直しを行うことが必要としています。
そこで検討されるべき現行諸制度の問題点を挙げています。
現行の労働時間に関する諸制度の現状と課題
(1)年次有給休暇:取得率は低下しており、その原因の一つに休暇取得を労働者の時季指定に任せているという仕組みの在り方が、労働者に取得をためらわせていると考えられる。
(2)時間外・休日労働:時間外労働の限度を超えて労働できる労働時間の延長制度、「特別の事情」は、平成16年4月からは
臨時的なものに限ることを明確にしたが、さらに抑制が求められる。
(3)フレックスタイム制:中小企業をはじめ、導入が進んでいなが、導入された場合の労働者は積極的に利用している。
(4)事業場外みなし:事業場の中での労働に対し、実労働時間の把握が煩雑であるという意見がある。
(5)専門業務型裁量労働制
(6)企画業務型裁量労働制
(7)管理監督者

V 新たな労働時間制度の在り方
1 生活時間を確保しつつ仕事と生活を調和させて働くことを実現するための見直し
以下の点を挙げ、それぞれの現状を踏まえ、見直しの必要性を認めている。
(年次有給休暇)
(時間外・休日労働)
(フレックスタイム制)
(事業場外みなし)
2 自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者のための制度
(1)検討の視点
まず検討の視点として、結果として日本の経済と経済社会の発展に資することにもなるのは、労働者個々の更なる能力発揮が進む制度を作ることであると考えています。その上で、それは労働者本人が労働時間に関する規制から外れることによって、自由で弾力的な労働が可能になることと、自分が納得してそのような選択ができる制度を作ることであるとしました。
新たな制度がこのような視点で設計される場合、労働者が能力を発揮するための前提として、労働者の心身の健康確保を留保する必要があることとしています。新しい自律的な労働時間制度の導入は、新しい労働時間規制の適用除外の枠組みができることなので、結果として過重労働の発生がないような配慮が必要となるためです。
以下、新しい自律的な労働時間制度など次のような項目に従った報告となります。
(2)新しい自律的な労働時間制度の要件
   @勤務態様要件
   A本人要件
   B健康確保措置
   C導入における労使の協議に基づく合意
(3)法的効果
(4)健康確保措置
   (健康状況等のチェック等)
   (休日の確保) 
(5)労使の協議の役割
(6)適正な運用の確保
   (苦情処理措置)
   (履行確保のための行政の役割) 
(7)現行制度との関係
   (現行裁量労働制との関係)
   (監理監督者との関係)

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