「今後の労働時間制度に関する研究会」の報告書・2

「今後の労働時間制度に関する研究会」の報告の続き
報告は3項目に分かれ、初めに「T:現状認識と今後の展望」があり、次に「U:見直しの方向性」、最後に「V:新たな労働時間制度」という構成になっています。
ここではUの「見直しの方向性」についての報告を紹介します。

「見直しの方向性」では、既述とダブりますが
すべての労働者が、個人の選択によって、生活時間を確保しつつ、仕事と生活を調和させて働くことを実現するという観点からの検討を行うことが必要であるという前提に立ち、その上で「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく、成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者」について、現行の労働時間制度では十分に対応できていない部分を検証した上で、労働時間制度全般について、運用や制度そのものの見直しを行うことが必要である、としています。

現行の労働時間制度では十分に対応できていない部分として、「現行の労働時間に関する諸制度の現状と課題」の中で次のような問題点を挙げ見直しを検討すべきであるとしています。

現行の労働時間に関する諸制度の現状と課題

(1)年次有給休暇
年休の取得率は低下しており、労働者の7割が年休取得にためらいを感じている。その原因の一つに、休暇取得を労働者の時季指定に任せているという現行制度の仕組み自体にあるとも考えられる。
(2)時間外・休日労働
時間外労働の限度を超えて労働できる労働時間の延長制度、いわゆる「特別の事情」は、平成16年4月からは臨時的なものに限ることを明確にしたが、さらに抑制が求められる。
(3)フレックスタイム制
中小企業をはじめ、導入が進んでいないが、導入された場合の労働者は積極的に利用している。
(4)事業場外みなし
事業場の中での業務従事に対しては実労働時間の把握が必要とされているが、把握が煩雑であるという意見がある。
(5)専門業務型裁量労働制
この制度に関しては制度趣旨が一定程度実現されていると考えられ、労使双方ともに対象業務及び法的効果とも現行制度のままで良いとすものが多い。しかし実態として、追加の業務指示等により業務量が過大となるケースが見られることや、対象業務の範囲が狭すぎるとの意見もある。また、法的効果としては労働時間規制の適用除外を求める意見も一定数存在する。
参照:専門業務型裁量労働制とは、
業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。(厚生労働省労働基準局監督課)
(6)企画業務型裁量労働制
制度趣旨は一定程度実現していると考えられるが、実態として業務遂行にあたっての裁量性が確保されていないケースや、健康・福祉確保措置や苦情処理措置が適切に実施されていないケースが見られる。
この制度に関する使用者側の意見には、対象業務の範囲が狭すぎること、法的効果の変更を求める、などが多くあり、労働者側にも同様の意見が一定数存在する。
参照:企画業務型裁量労働制とは、
経済社会の構造変化や労働者の就業意識の変化等が進む中で、活力ある経済社会を実現していくために、事業活動の中枢にある労働者が創造的な能力を十分に発揮し得る環境づくりが必要となっています。労働者の側にも、自らの知識、技術や創造的な能力をいかし、仕事の進め方や時間配分に関し主体性をもって働きたいという意識が高まっています。
 こうした状況に対応した新たな働き方のルールを設定する仕組みとして、事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とした「企画業務型裁量労働制」が2000年(平成12年)4月より施行されましたが、平成16年1月1日より、この制度がより有効に機能するよう、その導入に当たり、労使の十分な話合いを必要とすること等の制度の基本的な枠組みは維持しつつ、同制度の導入・運用についての要件・手続が緩和されています。
 関係労使におかれては、本制度の趣旨及び内容を理解され、創造性豊かな人材が、その能力を存分に発揮しうるよう自律的で自由度の高いフレキシブルな働き方の実現に向け、労働時間管理のあり方を見直し、本制度の導入について御検討ください。 (厚生労働省労働基準局監督課)
(7)管理監督者
法制定時には少なかったスタッフ職が増加しており、処遇の程度によっては一定の範囲で管理監督者として扱われるようになってきている。
また管理監督者として取り扱う労働者の範囲については、企業ごとに差が生じてきており、中には管理監督者として取り扱われることがふさわしくない者が対象とされている例が見られる。

運営者情報

当サイトはリンクフリーです。
相互リンクにつきましては、現在のところ中止しておりますが、今後当サイトの内容と関連するサイト様の募集を検討させていただいております。決定次第連絡先を掲載する予定です。

inserted by FC2 system